GTZ Triangle Experimental #1 (2025/3公開)

Trianngle Experimental #1は、基本部分の組み込みが終わった時点で、ゲネプロ中の"GLAY/HISASHI氏"に見初められ、ご本人の一声で、そのままツアーに、PVにと、お供することになったモデルです。Experimental #2にも共通しますが、ピックアップのスリムさに加えて、PUリングを槍型でコンパクトにしたことによって、ギター全体が縦長で凛々しく見えます。GTZのシリーズでは、Soloが男性的、Duoが女性的とするならば、Triangleは「アンドロジニー」や「ユニセックス」という言葉が似合いだと思います。出演者がすべて女性の宝塚歌劇にあって、黒スーツ姿が特異なフェロモンを放つ男役トップスターとでもいいましょうか。

このモデルのデザイン画では、まず最初に、上から下まで真っ黒いギターを描きました。その段階でハートの数を3個に決め、ピックアップの色もブラックに決めています。黒は、上手く使うと他の色を引き立たせたり、神秘的に見せたりすることができる色です。が、実際に「黒い」と思っていても純粋な黒ではなかったり、黒に限りなく近い紺だったりと、大変面倒なカラーですから、イメージの中で、「クロ」ときめていたとしても、実際に目の当たりにしてみないと、微妙なテイストが決定できません。とくに、周囲の環境やデザイン、カラーリングによって、例えば銀色が「黒い影」に見えたり、紺色が「晴天の日陰」に見えたりしますし、面積によっても黒の重力は異なります。Triangleの黒は、それらの試行錯誤のブラックなのです。

精緻な手描きのエングレイヴィング・デザイン

こうして、Triangleのボディカラーを、「どんな黒か」イメージし、次にバインディング、ピックアップリング、塗装の艶、指板、エングレイヴの面積へと展開していきます。

黒いシングルピックアップには、当時松崎氏がイチオシしていた、ジョー・バーデンがあっさりと決まりました。平行にレイアウトされたデュアルブレードのルックスが気に入ったこともありますが、そのトリッキーなサウンドが従来の量産モデルに見られない「シングルカッタウエイのセットネック3PU」を、さらに際立たせてくれたからです。こうして写真を改めてみてみると、ステージでもスタジオでの、どんなシチュエーションにおいても、周囲と調和しながらも、際立つ独特な「ブラック」の存在に仕上がりました。

12Fのクロスインレイは、当初HISASHIさんから「11Fと13Fのダイヤが邪魔」とご指摘を受けましたが、ここは、デザインのエクスペリメンタル・プロジェクトということで御納得いただけ、感謝しております。PUリングの面積、トグルスイッチプレートの形状、テールピースの大きさなど、非常にバランスがとれ、視覚の重心がちょうど24Fあたりに来ています。バーティカルでもホリゾンタルでも、ななめ演奏ポジションでも、重さを感じさせませんね。

(文責:三ツ井忠)