GTZとHearts & Soul

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さて、GTZのデザインを引き受ける"私"は、幸運にも、90年代前半に、トニー・ゼマイティスにギターをオーダーする機会を持つことができ、 オリジナルデザインで3本のギターを作らせました。 その内の一本が写真の、「Zemaitis:Hearts&Soul」です。 小振りでウエストの引き締まったボディは、治具から立ち上げた独自のシェイプで、パールとメタルでレイアウトしたハートが、 アール・ヌーヴォの上品なテイストを醸し出しています。

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このデザイン上の重要なポイントは、インレイとパーツの位置関係です。 PUの色・大きさ・数と、ハートの位置関係・数、PUリングやテールピースのサイズ・形状ともに、5mmずれてもデザインを台無しにしてしまう、 綱渡り的な緊張感が伝わってきます。 こうした、ディテイルにこだわりつつも、ステージやTV放送でスポットライトを浴びて観られることを前提としたギターのデザインは、 ギブソンがすでに50年代にトライアルしていたエキスプローラーやフライングVなど、 工業デザインから派生したアウトライン強調型のエグザジュレーションとは異なった、歌舞伎衣装や西陣織の美に似た、 「一定のルールの中での、デザインの遊び心」として、多くのバリエーションに発展していけると感じています。

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_7B_3478ハートのメタルプレートとミュシャ

今回、プロジェクトのスタートとなった「GTZ Hearts&Soul」は、 ハンバッカー、一基を搭載した「Solo」、2ハムの「Duo」、そして3xシングルの「トライアングル」から成る「ハート」をモチーフにした三部作で、 それぞれ4モデル・計12台を具現化しました。 ギターは、すべて、同一のボディー・シェイプから成っており、デコレーションとハードウエアーのレイアウトだけで、 スリムに見えたり、グラマラスな印象を受けたりする面白さを感じていただけると思います。 従来はインレイのごく一部に使われる程度であった、黒蝶貝やターコイスなど、新しい素材にもチャレンジし、 且つ、ハンドメイドの利点を生かしたアルミパーツを多様することで、デザインを立体化する幅が広がったと実感しています。

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Ma- 004White Marmaidのバックプレート(Designed by Taddy Mitsui)