GTZのコンセプト by 三ツ井忠
ギターをデザインするときに、ギタリストの方からよく質問されるのは、「作るときのことを考えてデザインしますか?」です。私は、作り手の手間や工数、複雑さ、技術的難易度は、あまり気にしないようにしています。むしろ「エッセンスを決めて」全体のデザインに先に着手していきます。この点、Tony(Zemaitis)にも、松崎さん(Zodiac Works)にも、「え??これやるの?」と言われながら苦労を掛けてきました。でも、いつも楽しんでチャレンジしていただいていると思います。工具や工法、作業を知っていると、切り出しづらいアングルのカッタウエイや使い辛い素材などを避けがちですが、私は比較的お構いなしで、美的な視点を最優先しています。デザインは大まかでラフに見えますが、プレイヤビリティーや、重心の位置、各部位の位置関係などを、なんども頭の中でシミュレートし、最初のコンセプトを崩さない様心がけます。
ギターは立体物で三次元ですが、そのデザインをスケッチブックに描くのは二次元ですから、GAPを埋めるための目安感というか感覚はとても大事ですね。指定した素材のもつ質感(マチエール)や、平面では見えないネックの段差やバインディングもしかりで、それらが「総合的に世界観を作り出し、エッセンスを醸し出す」。それを力強く表現し、伝えていきます。私は、バーチャルな3Dやソフトは使わず、いまだに手書きのデッサンですので、スケッチだけで表現できないニュアンス・特徴・ディテール・素材のマチエールは、やはり最後はギタリストにもビルダーにも、上手く伝わるようFace to Faceを心がけています。「仕上がったので、ファイルを添付するから見ておいて・・・」というのは、なんとなく苦手なのかもしれません。裏面にも特徴を持たせることが多いので、デッサンは裏と表を描きます。細かな彫金がある場合は、パーツのアップも描き出していきますが、これが実はすこぶる楽しい時間でもあります。
エングレイヴのデザインは、かなり楽しい
オーダー主と一緒に蕎麦屋でデッサンすることもあります