Guitar Design 2 Art of the Guitar
余談ですが、フランス語とかイタリア語の響きには、独特のクールさというか高貴とかお洒落なトーンがあると思いませんか? スポーツカーでも、「クワトロバルボーレ」や「ビトウルボ」の単語は、発音がアートっぽくてかっこいい。英語で「フォーバルブ」「ツインターボ」というと、いかにもメカっぽいですからね。
(courtesy of USA Auto)
オートクチュールの観点でいうと、Zemaitisは、要望があればオーダー主の意向を反映したオリジナルデザインで製作してくれるルシアーでしたから、学生時代から私も「いつか作ってもらう日」を夢見て「パリコレのデザイナー気取り」にギターのボディやピックアップ・レイアウト、ヘッドストックの形状、インレイ文様まで、山のようなデザイン画を描き貯めてきたのです。
実際、オーダーが決まってからは、トニーと何度も手紙でやり取りをしました。彼はしきりに「どんなのが欲しいのか、何がいいのか、どう見せたいのか」と、デザインについてたくさんの質問を浴びせてきました。ユーザーのニーズや嗜好を最大限汲んでくれる彼の寛容性は、「気難しい職人」というイメージとは裏腹に、非常にオープンなセンスだと感じました。
「クルマは何にのっているのか。飛行機は好きか。手の大きさはどれくらいだ。」という個人的な話題も多くあったことからも、彼が一点ものを作り上げるアーティストだという自覚がうかがえます。私も、GTZをデザインする過程では、使うひとのパーソナリティーを尊重し、ギタリスト自身が想像する以上のものを作り上げたいと心がけています。Tonyがそうであったように、「オーダー主が期待した通りのギター」を創るのではなく、「思いもしなかった素晴らしさを提供する」のが、私のデザインの存在意義だからです。
Tonyは、手形まで参照してネックのグリップを決める
顧客と一緒になってデザインを決める
「モードの帝王」イヴ・サンローランは、オートクチュールに対して「芸術的衝動を服飾というスタイルで実験したいと思ったとき、その贅沢な素材と縫製技術をもつオートクチュールのアトリエこそが、その実?現を可能にしてくれる」と言っています。
(フランソワ・コラール シャネルの手 1937年)
まさに、ギター製作における、優秀な工房・ルシアー・ビルダーは、ミュージシャンやアーティスト、ロック・スターにとって、こうした役割を担ってくれるアトリエと言えるでしょう。
オートクチュール展での著者デッサンから